原田のブログ
痒みの治療を考える
2025-03-03
カテゴリ:犬,猫,皮膚科
春がやってきた!
寒い寒い冬が急に終わろうとしていますね。暖かい日が増え始め、寒さで力んでいた身体も、少し緩んできた気がします。
そんな季節は人も動物も体調を崩しやすいので、注意が必要ですね。
今回は当院における痒みを伴う皮膚疾患の診断治療のエッセンスについてお伝えできればと思います。

痒みの原因
まずは上の画像にまとめてあるのですが、原因から考えます。皮膚科の場合はいくつかの段階を経て今の見た目になっていることが多いので、根本を見極める必要があります。
例
アトピー ⇨ 痒み ⇨ 膿皮症 ⇨ 痒み ⇨ アトピーの悪化
このような状況の場合、膿皮症と呼ばれる細菌感染は目立つので、抗生物質を処方されたりするのですが、
それでは必ずと言っていいほど再発します。
原因は大きく分けて4つ
① 感染症
② アレルギー・アトピー
③ 内分泌疾患
④ その他
それぞれ原因により治療が異なるにも関わらず、ほとんどの場合「脱毛」や「痒み」といった症状が出るため、飼い主様では見極めが難しいです。そのため「脱毛」「痒み」以外のポイントも踏まえ、何が原因か推測していきます。そのポイントをご紹介します。
◉毛や肌の状態
・本来の毛並みであるのか?
・肌は荒れているのか?
・フケが多くないか?
・ベタつき、臭いはないか?
◉いつから症状が出ている?
・1〜2歳の頃から、軽いが症状があったのか?
・歳をとってから悪くなってきたのか?
◉外耳炎はあった(ある)のか?
◉避妊手術や去勢手術はしているのか?
◉うんちの状態はどうか?
・形だけでなく回数も確認
◉何を食べているのか?
・おやつも含めて全て確認
◉お家やお外での様子は?性格は?
・神経質
・こだわりが強い
・後追いがすごい
◉犬種は?
・柴犬
・フレンチブルドッグ
・プードル
・マルチーズ
・シーズー
・ポメラニアン
細かなポイントはもっとありまずが、とりあえず羅列するだけでも、色々な要因で判断していくことがわかっていただけると思います。
そのため、当院では詳細な問診をとり、お話に時間をかけます。そのため皮膚科の問診票を別にご用意しております。
もちろんお話をうかがい、身体検査をするだけでは無く、必要に応じて検査を実施します。
皮膚科の問診票

抗生物質を使わない皮膚治療
当院の皮膚科治療では「抗生物質を使わない」ことがほとんどです。
これは別にモットーでもなんでもなく、痒みの根本の原因が細菌感染であることが滅多にないからです。
なぜなら、細菌感染といっても、感染を起こす細菌は外からやってくる細菌ではなく、皮膚の常在菌だからです。
(※常在菌とは健康な犬猫でも人でも必ず存在する細菌のこと)
抗生物質で常在菌を撲滅することはできず、むしろ腸内細菌もやっつけられてしまうことで、
かえって常在菌のバランスを壊し、症状が悪化(再発しやすくなる)こともあります。
根本の治療や肌荒れの治療、免疫向上のケアをすることで、細菌感染は治ります。
そのため抗生物質を使う機会は滅多にありません。
アポキルで治らない痒み
そしてよくご相談を受けるのが、最近では一般的になってきた
アポキルを使っているけど
すぐ痒みが再発する
もしくは良くならない
というものです。これにはいくつかパターンがあります。
①そもそも痒みではない
実は痒いのではなく、心理的な要因が原因で舐めている(噛んでいる・毛をむしっている)
②痒みしか抑えていない
痒み止めはあくまでも対症療法です。痒みを抑えている間に、いかに肌の状態を良くするかを考える必要があります。
肌の状態が改善していないのに痒み止めをやめれば、痒みは再発します。
いかに肌の状態を良くするかというところがポイントです。
③痒み止めの効果が不足している
アポキルは非常に優秀な痒み止めですが、痒みの重症度がひどい場合、その痒みまでは抑えきれないことがあります。
その場合は一時的に他の痒み止めを併用せざるを得ない場合があります。
またそもそもアポキルより他の痒み止めの方が有効な場合もあります。(ステロイド以外で)
非常に優れた痒み止めであるアポキルを使っても改善されない場合は、もう少し深く治療をする必要があります。
スキンケア

スキンケアといってもピンキリで、何をどこまでやるのが正解か悩まれている方が多いです。
例えば
・ノルバサンシャンプーをずっと使っている
・マラセブシャンプーをずっと使っている
・2〜3日に一回洗っている
こんな方はいらっしゃいませんか?
こういったパターンは注意が必要です。なぜなら最初は調子よくても
ずっと続けていることで、メリットよりデメリットの方が上回っている可能性が高いからです。
シャンプーの種類や回数は
・調子
・期間
・季節
などで変わっていく場合が多いです。それらを見極めて適切なスキンケアを行う必要があります。
また保湿剤などは物選びも重要ですので、ぜひご相談ください。
そして当院の特徴でもある「薬浴」ですが、こちらは美容目的のトリミングとは異なり
皮膚疾患を持つワンちゃんの「皮膚のためのシャンプー療法」でございます。
こちらは獣医師の判断で行いますので、ご興味ある方はご相談ください。
フードの悩み
こちらで悩まれている方も大変多いです。
いわゆるフードジプシーの方結構いらっしゃるのではないでしょうか?
当院ではもちろん療法食を用いた食物アレルギーの治療を行うこともありますが、
免疫が関与していない食物不耐症の治療を行うことも多いです。
※食物不耐症とは有名なパターンですと
グルテンや乳糖が消化できずに不調をきたすパターン
があります。
このパターンは検査で診断がつかないため、推測していくことが必要です。
一口に食事療法といっても様々なパターンがあり、一つ一つ意図をもってフードを試していく必要があります。
「今なぜこのフードを与えているのか?」を説明できない場合は注意が必要です。
ちゃんと意図をもって試すことで、調子が良くない場合でも診断としては前に進むことができます。
(そのフードが合わないという事を知ることも大事)
もし混乱されている方がいらっしゃいましたらご相談ください。
ずっと薬を使わないといけないの?
これも良く受けるご相談の一つです。
私自身が薬を嫌う傾向にある人間なので、よく気持ちがわかるのですが、どんな薬であれ「ずっと飲む」ということに不安を覚える飼い主さんは多いと思います。
そして多くの痒みの治療のゴールが「【最低限の投薬で】本人の生活の質が維持されるぐらいに痒みを抑えること」
になります。
それを踏まえて、投薬をなるべく減らしてくチャレンジをします。
先ほどご説明した
・スキンケア
・フード(腸活)
を併用することで投薬を減らしていきます。
全員が減薬できるわけではないですし、タイミングや季節にもよりますが、
減薬してみて判断をしていきます。
その上で調子悪くなれば再度投与したり、別の何かを試したりと試行錯誤をします。
そうこうしているうちに一年が経つと、年間での調子の波が把握できるため
その経験に基づいて薬の調整を行なっていきます。
こんな感じで年間を通じて皮膚治療を考えることで、トータルの投薬量を減らすことができます。
今回はよくご質問いただく内容を中心に当院の皮膚科治療のエッセンスをお伝えしました。
イメージしにくい部分もあったと思いますが、お悩みの方いらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談ください。